三田。

分析手法はすぐ陳腐してしまう。100年後に残ってる研究は複雑な多変量解析ではなく丁寧に記述統計量をみてる論文。そういう研究が家族社会学には求められてるし、そういう研究が100年後もサイトされ続ける。

Mustillo, Sarah A., Shannon Dorsey, Kate Conover and Barbara J. Burns, 2011, “Parental Depression and Child Outcomes: The Mediating Effects of Abuse and Neglect,” Journal of Marriage and Family, 73(1): 164–180.

Using longitudinal data on 1,813 children and parents from a nationally representative child-welfare sample, National Survey of Child and Adolescent Well-Being (NSCAW), this study investigated physically abusive and neglectful parenting as mediating the effects of parent depression on child mental health by developmental stage. Findings from latent growth models indicated that parental depression had a significant impact on child outcomes for all youths, but of the 2 types of parenting behaviors, only neglectful parenting mediated the relationship for preschool and school-aged children. Neither parenting behavior mediated the effects of parental depression for adolescents.

アメリカにおける児童福祉に関する代表的な社会調査 National Survey of Child and Adolescent Well-Being(NSCAW)の親子縦断データ(n = 1,813)を用いて,発達段階にある子どものメンタルヘルスに親の抑うつ状態が及ぼす影響を媒介するものとして,育児における身体的虐待とネグレクトを研究したよ.
潜在曲線(成長曲線モデルと同じことだよね?)による分析の結果,次のことがわかったよ.(1) 親の抑うつ状態はあらゆる年齢層の子どものアウトカムに影響を与えていたよ.(2) 身体的虐待とネグレクトのうち,ネグレクトのみが未就学児童(2-5歳)と学齢期児童(6-11歳)に親の抑うつ状態の影響を媒介していたよ. (3) 身体的虐待とネグレクトのうち,青少年(12-15歳)では,親の抑うつ状態を媒介していなかったよ.

まずいちばんよくわからないこと.Table 1 をみると,そもそも従属変数であるところのCBCLスコアは時点によってほぼ変化してない.ので成長曲線モデルのようにYの時間的変化のパターン(の切片と傾き)を当てるモデルが妥当なのかよくわからない.特に多変量においても,直接効果と媒介効果のモデルの組み方がけっこう名人芸っぽい印象をうける.児童の体重とか身長,受験前の勉強時間の推移みたいなテーマだったら成長曲線モデルどんぴしゃだとは思うんだが.これ,別に固定効果・ランダム効果(ハウスマン検定)で,Yの時間的変化のパターンではなくて,Y自体の規定要因をモデルをだしいれして議論すればもっとシンプルな分析になったのでは.ただまあ,4人の共著でJMFに通したぐらいだから,たぶんぼくが間違っているのでしょう(なんだそれ).