最近,なにかあるとパネルパネルという雰囲気で,それはまあ(ぼくもライフコースをテーマに研究しているので)そうだよな,と思うんだけど,いい加減ウンザリもしてきた(とりあえず逆張りしておく).たしかに,パネルデータ分析には弱点はまったくないが,パネル「調査」にはいくつか問題がある.attrition や標本の代表性,調査コスト等々(参考).だったら,じゃあこれまで(パネル調査不毛の大地であるところの我が国の)社会学者は縦断的な問いにまったく応えられていないかというと,そんなこともないどころかむしろ限られた社会調査のなかで知恵をしぼってユニークな分析をおこなってきた(そして,なによりも重要なのは理論を前進させてきた).たとえば,以下.
いったいなにがいいたいのか自分でもよくわからないけど,xtlogit に頼りすぎて(xtset 君は神コマンド)ホントーにだいじなことを見失わないようにしたい.特定の研究(群)をディスっているわけではないし,そんなつもりは毛頭ないのだけど,なんか直感的に違和感があるのである.ようするにこれはただの一般論だけど,計量分析は道具でしかない(自分に言い聞かせる).人類の歴史は先行研究からのキョリによって前進するのだから.
佐藤嘉倫・吉田崇,2007,「貧困の世代間連鎖の実証研究――所得移動の観点から」『日本労働研究雑誌』563: 75-83.
本稿では, 従来困難だとされてきた父所得の推定を行い, 父所得と本人所得の間の世代間 移動に着目して, 現代日本社会で貧困の世代間連鎖が起こっているか否かを検討する。 全国調査データを用いた分析によると, 現実に生じているのは, 「貧困の連鎖」 よりも 「富 裕の連鎖」 とも言うべき現象である。 すなわち所得四分位による所得移動表の分析から, 最上層で世代間移動がもっとも固定的であることがわかった。 そして, その背後にあるの は, 父所得から学歴, 学歴から現職, 現職から本人所得という一連の地位達成過程である。 このように, 父所得が本人所得を直接的に規定していないので, 「富裕の連鎖」 に政策的 に介入するのは困難である。
稲葉昭英,2015,「ライフサイクルと貧困――Recursive regression を用いた母子世帯所得の推定」『成城大学社会イノベーション研究』10(2): 41-57.
木村邦博,2000,「労働市場の構造と有配偶女性の意識」盛山和夫編『日本の階層システム 4 ――ジェンダー・ 市場・家族』東京大学出版会,177-192.
もちろん,ロバストな手法でこれまでの知見が大きく覆されることだってある.これは本当にすごいことだし,この梯子を外される感覚は何者にも代えがたい.たとえば.以下.
永井暁子,2011,「結婚生活の経過による妻の夫婦関係満足度の変化」『社会福祉』52: 123-131.
結婚生活の経過に伴い妻の夫婦関係満足度はどのように変化するのか、また結婚年数によって夫婦関 係満足度の規定要因は異なるのか。この 2つの疑問について、公益法人家計経済研究所の「消費生活に 関するパネル調査」データを用いて検証した。
その結果、以下の知見が得られた。第一に、結婚生活の経過に伴い、従来支持されていた結婚初期の 満足度の低下と後期の回復を示す「U字カーブ」を描くことなく、ほぼ一貫して満足度は低下すること が分かった。第二に、とくに結婚初期の満足度の低下が著しい。第三に、「子は鎹」ではなく 6歳以下の 子どもの存在は満足度を低下させる。第四に、結婚初期には夫の平日の家事育児時間、休日の家事育児時 間が満足度を上昇させ、結婚生活後半では夫の年収と休日の家事・育児時間が妻の満足度を上昇させる。
結婚年数による夫婦関係満足度の規定要因の違いを夫への役割期待の変化と考えた場合、ライフス テージによる役割構造の変化であるとともに、配偶者への役割期待と配偶者の役割遂行の不一致から役 割期待を変更させた可能性も示唆された。
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明後日の準備がうまくいかず調子が悪いので,つまらないことばかり考えてしまう(むしろ,調子が良い日なんてあるのでしょうか).
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Men have become the tool of their tools(人間は自ら作り出した道具の道具になってしまった).
Henly David Thoreau